本書は<ススキノ探偵>シリーズとして、第四作目に当たりますが、文庫本としては前作の 『バーにかかってきた電話』 に次ぐ第3巻目になり、初の短篇集として5話が納められています。
表題作であり第一話の『向う端にすわった男』は、いつも通り馴染のバー「ケラー」で呑んでいる<俺>ですが、見知らぬ客が訪れ、すっかり男の作り話に付き合わされる奇妙な顛末が描かれています。
第二話の『調子のいい奴』は、大学時代のゼミの恩師の娘<美佐子>がクラブホステスになり、結婚詐欺師に騙されているのではないかと心配した男からの依頼で、<伊野田>を調べ始める<俺>ですが、夢を追い続けることに酔いしれた哀れな結末が妙に悲しさを誘います。
客引き(ポーター)の<ノブ>は家庭も子供もありながら、中学校の同級生<チズル>の行状が気になる『秋の終わり』、離婚して分かれた息子が、有名大学の法学部に入学、男から別れた妻を探すことを依頼される『自慢の息子』、昔<俺>が企画したイベントのお金を持ち逃げした<池田>の悪だくみを、取引先に教えたことにより、仕事が回ってきた企画会社「ヘペイトス」にまつわる『消えた男』等、どれも「ススキノ」を舞台として、<俺>の哀愁が漂う作品が楽しめました。
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