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- 今年の読書(69)『日月めぐる』諸田玲子(講談社文庫)
物語りは、駿河国庵原郡小島、甲州往還と並行して流れる興津川が流れ、一万石の大名となった滝脇松平家七代目の信孝が陣屋を構えて小藩を立藩した地であり、青い空と澄んだ川だけがある鄙びた村を舞台としています。
立藩の時から貧窮化している藩財政を背景に、村では駿河半紙を製造することが奨励され、村人たちは紙の原料となる三椏(みつまた)を育てています。
そんな村の岩場に、美しく色づいて渦がまく場所があり、収められている七話の短篇の重要な位置を占め、人間が巻きこまれる喜怒哀楽の象徴として登場しています。
過ぎ去る時間と登場人物たちの数奇な人生が、各短篇が絡みながら描かれてゆき、最後の短篇で移ろいゆく感情のはかなさの集大成として締めくくられています。
現代社会とは違い、与えられた環境の中で精いっぱいに生きてゆく、武士や商人や農民の心意気とでもいいますか、自らの「規」をわきまえながら生きてゆく妙が味わえる一冊でした。
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