窓の話1『はじめに』
5月
11日
窓は室内と屋外を結ぶ建具であり、換気と採光の機能を持っている。しかし窓は冬には室内の熱を失い、夏は望まない太陽の輻射熱を室内に吸収する建具であり、窓の性能が住宅の光熱費に大きな影響を及ぼすことになる。また窓は建具の中では比較的高価であり、一度取付けると簡単に交換出来るものではない。そのため窓を選ぶにはその特徴、性能、耐久性などを十分吟味しなければならないが、施主はケースメント、ダブルハング、オーニングなど窓のデザインや機能に対して意見を述べても、建築士や工務店が勧めるメーカーの窓を特に深く考えずに採用しているケースがほとんどではないだろうか。
たとえ施主が窓を自分で指定する場合でも、住宅建築雑誌に広告が掲載されている国産、または外国の大手メーカーの窓を盲目的に選ぶことが多いのではないだろうか。しかし広告ではその商品のセールスポイントが強調されており、短所を見抜くことは専門知識がなければ不可能だ。
建築士があるメーカーの窓を勧めるのは、過去にその窓を使って建てた家がデザイン的に良く出来て、施主にも気に入ってもらえたとか、メーカーのカタログやインターネットを見てデザインが良いので是非使ってみたい、という理由が多いのではないだろうか。でも窓の良し悪しは気密性、水密性、透視性、断熱性、遮熱性などに加え耐久性も検討すべきであり、これは10年か20年経たないとわからない。
工務店があるメーカーの窓を勧めるのはその窓の代理店になっているからとか、そのメーカーの取扱店とのつながりが深い、という理由が一般的ではないだろうか。工務店が施主に「これは良い窓ですよ。」というのは、必ずしも施主にとって「良い窓」ではなく、しばしば工務店にとって扱いやすい、あるいは儲かる「良い窓」である。
くまごろうはこれまでに日本各地の多くの工務店や建築士と会ったが、窓について十分な知識を持っている人にはあまり会ったことがない。また、ホームショウなどで窓を展示している人たちと話す機会も少なくなかったが、窓に関する基本知識を十分に持った人は極めて限られていると思われた。
日本で窓に関する本を随分探したが、専門書をたくさん置いている東京神田の大きな本屋さんでも、『建築家のためのガラスの知識(鹿島出版会発行)』を見つけることは出来たが、窓の本を見つけることは出来なかった。そこで少しでも多くの人に窓に関する知識を理解してほしい、という願いをこめてこの一文を書いてみる。
くまごろうの持っている窓の知識の大部分はアメリカにおける窓に関するものである。それはアメリカで窓を勉強し、現在もアメリカに居住しているため、日本における窓の実情には必ずしも詳しくないためである。しかしながら日本にはアメリカから多くの窓が輸入されているにもかかわらず、ものづくりが得意な日本からアメリカに窓が輸出されていない現実は、窓に関してはアメリカが先進国である証しである、と思っている。だからアメリカにおける窓の知識は必ず日本でも役に立つと確信している。