今年の読書(50)『リボルバー』原田マハ(幻冬舎文庫)
8月
19日
パリ大学で美術史の修士号を取得した「高遠冴」は、小さなオークション会社CDC(キャビネ・ド・キュリオジテ)に勤務しています。CDCでは週一回のオークションが開催されていますが、ごく普通の商品ばかりで、高額の絵画取引に携わりたいと願っていた「冴」の元にある日、「サラ・ジラール」と名乗る婦人が、オークションに出品したいと錆びついた一丁のリボルバーを持ち込んできます。それは<フィンセント・ファン・ゴッホ>の自殺に使われたものだといいます。
19世紀の「タブロー」を研究している「冴」は興味を持ち、「ファン・ゴッホは、ほんとうにピストル自殺をしたのか? 」、 「あのリボルバーで、撃ち抜かれて殺されたんじゃないのか? 」の推測を元に、<ゴッホ>の足跡を、弟の<テオ>や当時の<ゴーギャン>の素行を検証しながら、錆び付いたリボルバーの真実を求めて調査を始めていきます。
<ゴッホ>と<ゴーギャン>の関係を主軸に、生前顧みられることのなかった孤高の画家たちの隠された物語が、ノンフィクションさながらに展開していきます。
原田マハさんは、『ゴッホのあしあと』など、<ゴッホ>に関する小説を数多く執筆されていて、そこにどれだけの愛情と情熱が秘められているのかがよく分かる一冊でした。
『美しき愚か者のタブロー』でも、表紙に<ゴッホ>のアルルですごした自室の絵『アルルの寝室』が使用されていますが、本作品でも、この部屋がある建物が重要な舞台として登場しています。