今年の読書(35)『長い長い殺人』宮部みゆき(光文社文庫)
4月
27日
本書は1992年9月の刊行で、比較的初期の作品ですが、人気作家としての素地が垣間見れる内容でした。
本書は10編の連作短編とエピローグから構成されていて、物語の語り手は、登場する人物の「財布」です。それぞれの「サイフ」には、人間並みの地力があり、張力と視力を備えていて、保険金目当ての交換殺人かと思わせる事件に巻き込まれた10人が持つ財布の視点から語られる10篇の物語が次第に繋がっていき、登場人物の人間模様と事件の真相が描かれていく形になっています。
犯人像の性格描写にも「財布」が用いられ、「合皮でできた財布でありながら、自分は本革だと勘違いしている」には、納得してしまいました。