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- 今年の読書(20)『あの日から君と、クジラの骨を探している』古矢永塔子(宝島社)
本州最北端の田舎町で、無気力に生きていた金髪の高校生<蒼>は17歳の春、気まぐれに立ち寄った心霊スポットの廃病院で、凜という地縛霊の少女と出会う。凜は、30年前に病死した永遠の16歳。儚げな容姿と芯の強さを併せ持つ。
将来の夢もなく、生きることが面倒だと言う<蒼>に、「バカッ!!」と本気で怒る<凜>。その瞬間、<蒼>の中で何かがスパークし、あっという間に心を奪われ、<凜>に告白する。<蒼>は<凜>の中に、本気になれる何かを見つけようとする。一方の<凜>は、生きることに投げやりな蒼の態度に不快感を抱く。しかし、ストレートに「好き」をぶつけてくる<蒼>に対して、<凜>の心はしだいに惹かれていく。
<凜>が住む廃病院には、水死したフランス人の<ボビー>、自殺した元女優の<明日香>、スーツ姿で元高校教師の<高田>さん、事故死した元大学生の<吉澤>君という、個性的な幽霊仲間がいる。彼らの間では、生きている人間さながらのやりとりが繰り広げられる。
<蒼>の右手首には、<蒼>が霊感体質になる原因となった、祖母の形見の黒数珠がはめられている。何度外そうとしても、外せない。<蒼>と<凜>をめぐり会わせたその数珠には、2人の絆に関わる秘密がありました。
無気力に生きる少年と、真面目に、でも死んでいる幽霊少女が、互いに心を揺さぶられ、鼓動を感じ合う恋をする。大切な人とともに生きていること、触れられることは、生きていると、つい当たり前に思ってしまう。その前提がない2人の恋のゆくえは。
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