本書には6篇の短篇が納められていますが、書名のタイトルの作品はありません。
作者が何を持って「華たち」と名付けられたのか、読み終るとおぼろげながらも見えてくる一冊でした。
幕末のえどの町を舞台に、小藩の下級武士たちや健気に市井に生きる不運な女たちを通して、「封建制度がもたらす個人の努力ではどうしようもない時代のなかで、懸命に生きることに夢を持ち続ける男や女の生き様が、見事に描かれています。
武家社会の名のもとに、健気に自分の「規」を守りながらの生き様は、まさにわずかながらも希望を持ちながら、明日に向かって輝く『闇の華たち』そのものでした。
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