今年の読書(28・29)『殺人の門(上・下)新装版』東野圭吾(角川文庫)
5月
19日
本書『殺人の門(上・下)』は新装版とあるように、2003年8月25日に刊行され、2006年6月24日に角川文庫版が発売されています。本書を原作とする映画が、2027年2月19日に公開予定ということもあり、2026年2月25日に、文庫を上下巻に分冊した新装版が発売されました。
主人公の「田島和幸」は、歯科医院を営む裕福な家庭に生まれ、育った少年でした。小学5年のころ、彼は同級生の「倉持修」と出会います。「倉持」は豆腐屋の一人息子で、貧しい家庭環境に育ちながらも強い野心と行動力を持つ人物でした。
二人は友人としてつきあいますが、その出会いを境に「和幸」の人生は徐々に暗転していきます。祖母の死をきっかけに家庭は不和に陥り、両親は離婚。父親は女におぼれ、その女の男の暴行により、手に麻痺がおこり歯科医を廃業。アパート経営もうまくいかず、裕福だった生活は崩れ去り、転校先ではいじめにも遭うようになります。こうした人生の転落の節目ごとに、「倉持」の存在が関わっていました。
「和幸」が高校を卒業後して社会に出た後も、「倉持」は彼の前に現れ続けます。「倉持」の誘いで就職した会社はサギまがいの怪しい事業を行っており、やがて破綻。「和幸」は職も信用も失うことになります。さらに「倉持」は、金銭や人間関係の問題でも「和幸」を巻き込み、彼の人生を繰り返し破滅へと導いていきます。「 和幸」は次第に「倉持」への憎悪を募らせ、「この男を殺したい」という強い殺意を抱くようになりますが、実際に殺人を実行することができません。
なぜ自分はこの男を殺すことができないのかと「和幸」はその疑問に苦しみながら、自分の人生を狂わせ続けた「倉持」との関係に決着をつけようとします。
物語は、殺意を抱きながらも殺人に踏み切れない人間の心理と、憎悪と依存が入り混じった二人の歪んだ関係を描き出していきますが、読み手としては、いつ殺人が行われるのかと読み進めているだけに、間延びした印象がしばらく続きますが、最後にきっちりと伏線を回収しての締めくくり、終止符を打つ展開は見事でした。










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