今年の読書(59)『霧をはらう(下)』雫井脩介(幻冬舎文庫)
11月
7日
(58)『霧をはらう(上)』に続く『霧をはらう(下)』です。
点滴殺傷事件で母親「野々花」が逮捕された「由惟」は、大学進学をあきらめ不登校の妹「紗奈」を養いながら、職場で社長の息子の専務の嫌がらせに耐えていました。
母親の無実を信じる弁護士の「伊豆原」は検察の立証を崩すべく、病院関係者の証言集めに奔走します。有罪率99%の現在の刑事裁判で無罪を勝ち取る打開策を見つけるために、犯行が不可能だったことを立証しようと頑張る中、主任弁護士側の「桝田」の行動に不信を抱いた「伊豆原」は、手弁当で「野々花」の私選弁護人となり、新しく妻の故プ敗の「仁科栞」を補助として、事件の再検証をしてゆく中で、新たな不審者を見つけ出します。
弁護士の業務を克明に記述しながら、裁判員制度と法廷での進行を絡め、後半に一気に驚愕の展開を見せ、事件の真実に迫っていきます。
親子と姉妹のお互いの信頼関係の絆、依頼人と弁護士の信頼関係を平行に描きながら、信じることの困難さと尊さを描く著者渾身の記念碑的傑作でした。