今年の読書(58)『霧をはらう(上)』雫井脩介(幻冬舎文庫)
10月
25日
本書『霧をはらう(上)』は、2021年7月に刊行され、2024年8月10日に発売されています。
古溝病院の小児病棟で、同室の4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が奪われた点滴殺傷事件が起こります。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児「紗奈」の母親「小南野々花」でした。
看護助手の経験もあり、献身的な看病のあまり、周囲の母親との軋轢も生んでいた彼女は取り調べで自白しますが、後に否認します。小学6年生の娘「紗奈」を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか?
人権派の大物弁護士「貴島義郎」と共に「小南野々花」を弁護する同期の弁護士「桝田実」と偶然会った「伊豆原柊平」は、「小南野々花」弁護団に加わり、事件の背景の調査に乗り出します。
「紗奈」の姉「由惟」は大学進学をあきらめ、小さな会社に就職、不当な扱いを受けながらも妹の面倒を見ていますが、「伊豆原」は姉妹の様子を気にかけながら、精神鑑定の結果も良くなく、病院関係者の聞き取りに奔走していきます。