『黄昏』@NHK-BSプレミアム
9月
1日
<ウィリアム・ワイラー>監督が、『探偵物語』に先立って製作・監督した、<セオドア・ドライザー>の処女小説『シスター・キャリー』を映画化した作品です。
19世紀末、シカゴに働きに出た田舎娘「キャリー」(ジェニファー・ジョーンズ)は、すぐさま悪い男にだまされ、彼と同棲を始める。彼女の勤める高級レストランの支配人「ハーストウッド」(ロウレンス・オリヴィエ)は素朴な彼女に惹かれていきますが、その裏には、全財産を自分名義にしている因業な妻との冷え切った仲がありました。「キャリー」との結婚を考え、妻に離婚話を持ちかける「ハーストウッド」はまるで相手にされず、また、ビタ一文自由になることもなく、遂に店の金を盗んで「キャリー」と二人、ニューヨークへ駆け落ちします。
幸福な暮らしを営んだのも束の間、私立探偵の追及に、残った金をすべて返し警察沙汰は免れたものの、彼には一生拭いきれぬ汚名が残り、まともな勤めも許されませんでした。やがて「キャリー」は女優となり、彼の留守中に姿を消します。時は流れ、「キャリー」は大スターになり、ある夜の公演の後、彼女は、楽屋口に施しを乞う浮浪者をまじまじと見た。それは紛れもなく自分の棄てた男「ハーストウッド」でした。彼女はその姿にショックを受け、再び彼と共に暮らし、二度と離れぬと誓いますが、彼女が事務所に金を借りに行っている間に、彼はテーブルの上の小銭を取ってとぼとぼと立ち去ってしまいます。愛ゆえに落ちぶれていく男の悲哀を<ロウレンス・オリヴィエ>が侘びしくみせて、<ジェニファー・ジョーンズ>も素晴らしいですが、何より彼の孤独なさまが目に焼きついて離れない、《男のメロドラマ》です。
主演は『嵐ヶ丘』以来<ウィリアム・ワイラー>と組んだ<ロウレンス・オリヴィエ>と<ジェニファー・ジョーンズ>で、<ミリアム・ホプキンス>、喜劇俳優<エディ・アルバート>、<ベイジル・ルイスディール>、<レイ・ティール>らが共演しています。