『モロッコ、彼女たちの朝』<マリヤム・トゥザニ>監督
6月
7日
地中海に面する北アフリカの「魅惑の国」モロッコ。この国の女性監督として初めてアカデミー賞モロッコ代表に選ばれたのは、新星<マリヤム・トゥザニ>監督。過去に家族で世話をした未婚の妊婦との思い出をもとに作り上げた長編デビュー作品です。
カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営む「アブラ」と、その扉をノックした未婚の妊婦「サミア」。それぞれに孤独を抱えていたふたりでしたたが、丁寧に捏ね紡ぐ伝統的なパン作りが心をつなぎ、やがて互いの人生に光をもたらしてゆきます。
モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、幾何学模様が美しいインテリア、軽やかなアラビア音楽など、あふれる異国情緒とともに、親密なドラマが描き出されます。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは。
家父長制の根強いモロッコ社会で女性たちが直面する困難と連帯を、フェルメールやカラヴァッジョといった西洋画家に影響を受けたという質感豊かな色彩と光で描き、2019年のカンヌ国際映画祭を皮切りに、世界中の映画祭で喝采を浴びた作品です。