『真鶴』川上弘美(文春文庫)
10月
14日
12年前に夫<礼>が失踪した44歳の<京>は、中学3年生の娘<百(もも)>と、古希を迎えつつある母と暮らしています。
文筆業の<京>は、夫<礼>の影を背負いながらも、出版業界の7歳年上の<青茲>と不倫の関係を持ちながら、日常から逃れるように夫の日記に書かれていた神奈川県の西部に位置する「真鶴」に出向いていきます。
物語の視点は<京>の目線で描かれ、身の回りに<あの女>がつきまとう幻想に取り憑かれていますが、「真鶴」での出来事を通して心の再生を掴む一年が描かれています。
文中に出てくる、「好きであることが、共にいるゆえにはならない」という一文が、心に残る一冊でした。