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投稿日 2011-11-30 21:30
神戸:ファルコンの散歩メモ
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ファルコン
本書は、角川書店が発行する『小説 野生時代』に掲載されていた4篇と、描き下ろし2篇を加えた6編からなり、連作短篇の構成になっています。高校時代の同級生、<柿崎美和>・<滝澤鈴音>・<八木浩一>は同じH大学の医学部を目指していましたが、<柿沢>は安楽死疑惑で離れ島の診療所に左遷、<滝澤>は離婚して、余命半年の肝臓がんを患い、医学部入学は諦めた<八木>は放射線技師に甘んじた過去があります。人生におけるつまずきは後悔すべきことではなく、新たな出発点だということを、三人三様の人間関係を通して、人生の機微や男と女の関係が紡ぎだされていく短篇でまとめられています。タイトルの『ワン・モア』の意味が、新たなる...
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投稿日 2009-10-14 21:31
神戸:ファルコンの散歩メモ
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ファルコン
本書『真鶴』は、2006年に文藝春秋社から単行本として刊行され、2007年(第58回)の「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞した作品です。12年前に夫<礼>が失踪した44歳の<京>は、中学3年生の娘<百(もも)>と、古希を迎えつつある母と暮らしています。文筆業の<京>は、夫<礼>の影を背負いながらも、出...
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投稿日 2009-03-04 21:28
神戸:ファルコンの散歩メモ
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ファルコン
『ジウ Ⅱ』 と続き、本書でシリーズが完結します。前作でSATの制圧一班の新隊長に任命された<伊崎基子>は、信用金庫強盗事件の強行作戦で壊滅的な被害を受けた部隊を立て直すべく、5名の新人メンバーと共に、新宿の街頭演説をする総理大臣の警護に当たります。作戦通り、暴動にまぎれて<伊崎>以下5名のメンバーは総理大臣を拉致、歌舞伎町に監禁して立てこもり、政府に対して歌舞伎町を「新世界」の名称で治外法権を要求してきます。大きな企みを持つ「私」(=ミヤジ)に洗脳されている<伊崎>は、歌舞伎町で捜査をしていた刑事たちを射殺してしまいますが、隊員との会話で、自分が騙されて仲間に引き込まれたことを知り、首謀者の...
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投稿日 2007-12-21 21:29
神戸:ファルコンの散歩メモ
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ファルコン
ススキノの便利屋で、30歳の<俺>を主人公とした 『探偵はバーにいる』 に次ぐ2作目が本書です。馴染のバー<ケラー>で呑んでいた<俺>に、<コンドウキョウコ>と名乗る女から電話があり、「サッポロ音興」の<南>に電話して「8月21日、カリタはどこにいる?」という伝言の依頼が舞い込みます。相手の反応を観察してほしいということで、任務を果たした帰り道、<俺>は地下鉄の線路に落とされ、危うく殺されそうなってしまいます。<俺>は俄然興味を持ち、<コンドウキョウコ>という依頼人と同姓同名のスナックのママが、地上げにまつわると思われる放火事件に絡み殺されていることを知ります。亡くなった<近藤京子>の母親を訪...