「旗師」とは、店舗を構えずに顧客と顧客の売買で利鞘を稼ぐ古物商のことですが、主人公<宇佐美陶子>もその一人で『冬狐堂』という屋号で商売をしています。
本書は<旗師・冬狐堂>シリーズとして 『狐罠』 ・ 『狐闇』 に次ぐ第3作目で、4篇の中短篇が納められていますが、どの作品も奥深い古美術業界の知識が散りばめられており、著者の博識に驚かされると共に、モノづくりの作家としての執念を感じながら読み終えました。
萩焼に取りつかれた作家にまつわる、<宇佐美>の師ともいえる人物が登場する『陶鬼』、古墳等の埋葬品を、無許可で掘り出す「堀り師」と呼ばれる男が主体の『永久の笑み』、染色剤に自分の血を注ぎ込んでまで緋色にこだわり続ける作家を扱った表題作の『緋友禅』、生涯に12万体を彫ったと言われる<円空>の仏像に関わる贋作にまつわる殺人事件を解決する『奇縁円空』と、どの作品も騙し合いと駆け引きが横行する骨董業界を舞台に、美麗の一匹狼としての<宇佐美>の活躍が楽しめる一冊です。
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