<水村舟>の本書『県警の守護神 警務部監察課訴訟係』は、第2回警察小説新人賞受賞作品です。警察小説といえば、殺人事件を扱う捜査一課モノが主流ですが、サブタイトルの「警務部監察課訴訟係」という珍しい部署で気になりました。警察が訴えられたときに対処する部署です。
主人公は交番勤務の新人女性警察官「桐島千隼」です。上司と共にパトカーで現場に向かう途中、バイクの自損事故を目撃し救助に向かいます。助けようとした「千隼」はひき逃げに合います。数日後病院で目を覚ますと、バイクの少年は亡くなっており、その責任を巡る民事訴訟を起こされていました。
そんな彼女の元へやって来たのが、監察課訴訟係の「荒城巡査長」です。裁判では無敗の〈県警の守護神〉と呼ばれている男で、元裁判官で弁護士資格を持つ警察官でした。「千隼」の話を聞いても、大事なのは事実ではなくて嘘をついてでも裁判に勝つことという姿勢で、正義に憧れて警察官になった「千隼」には、納得できません。
警察小説ですが、裁判にどう対処するか、どんな証拠や証人を準備して作戦を立てるかというリーガル小説の醍醐味も合わさり、「荒城巡査長」ノキャラクター、「荒城」と「千隼」の対立と友情、原告側代理人の辣腕女性弁護士との戦いが楽しめた一冊でした。