今年の読書(44)『サヴァナの王国』ジョージ・ドーズ・グリーン(新潮文庫)
8月
22日
著者<ジョージ・ドーズ・グリーン>は、MWA新人賞受賞作『ケイヴマン』で衝撃のデビューを飾ってから約30年が経ち、待望の第4作目が『サヴァナの王国』です。本書はCWAゴールド・ダガー受賞作品として、歴史の大きな闇を抉りだす、米南部を舞台とするゴシック・ミステリーの傑作です。
ジョージア州サヴァナの春の夜、常連客の集まるバーを出たホームレスの青年「ルーク」が殺害され、考古学者である連れの黒人女性「ストーニー」が拉致されてしまいます。青年の遺体が発見されたのは全焼した空き家で、所有者の土地開発業者「グスマン」が殺人と保険金目当ての放火の罪で逮捕されますが、「グスマン」は、探偵事務所も営み〈サヴァナ〉社交界を牛耳る老婦人「モルガナ」に真相解明を依頼することになります。彼女は次男の「ランサム」と孫娘にあたるバーのアルバイト女性「ジャク」に調査を命じますが、やがて明らかになってくるのは、思いもよらない南部〈サヴァナ〉の街全体の歴史の大きな闇でした。
主人公となるべき登場人物たちの家族関係が、緻密に描写されており、複雑な中に、家族の歴史と舞台となる〈サヴァナ〉の歴史が重なり合う時間軸が見事に描かれています。
アメリカの奴隷制度の歴史を背景に、〈サヴァナ〉の開発で利権を得ようとする者たちを絡めながら描き、小気味よい文体で、最後まで一気読みさせる構成でした。