今年の読書(81)『赤の呪縛』堂場瞬一(文春文庫)
12月
19日
本書『赤の呪縛』は、著者<堂場瞬一>の作家デビュー20周年の節目として、「父と子の相克」というテーマに真正面から挑み、2021年5月21日に刊行され、2023年11月10日に文庫本として発売されています。
36歳の警察官である息子「滝上亮司」と、政治家である父「喜多安武」の親子の確執を元に権力と血脈、信頼と裏切りに翻弄された物語です。
銀座の高級クラブで、ガソリンバラマキの放火事件が発生。オーナー「野村真沙美」と容疑者の27歳の女「西方若菜」が命を失います。
警視庁捜査一課の刑事「滝上亮司」が、捜査を進めると、亡くなった「野村真沙美」は父の元愛人であることが判明、背後に現在は神奈川県知事である父の存在が浮かび上がります。
かつて政治家の父を憎み、故郷の神奈川県を捨てた「滝上」は、捜査を進める上で「封印した過去」と向き合うことになります。
かつて政治家の父を憎み、故郷の神奈川県を捨てた「滝上」は、捜査を進める上で「封印した過去」と向き合うことになります。
容疑者の女は、不正ドラッグによる催眠行為での放火が浮かび上がり、「滝上」は過去に自分も使用していた薬と対峙することになり、父の元秘書も殺害される事件が起こり、一度捨てた神奈川県へと出向くことになります。破滅するのは、政治家の父か、薬中毒であった警察官の自分かが交錯する状況の中で、事件の真相にたどりつけるのか。
物語は事件としての決着がつかないところで終わるだけに、中途半端な気分にさせられて終わりました。タイトルの〈赤〉は、血筋と放火現場の状況を意味しているようです。