『ロストケア』@<前田哲>監督
12月
4日
<葉真中顕>の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品『ロストケア』を原作として、介護家族から慕われるほどの心優しい男性介護士が42人もの老人の命を奪ったのかを突き詰めていく社会派エンターテイメントです。
主人公の心優しい介護士「斯波宗典」を<松山ケンイチ>、「斯波」と対峙する検事「大友秀美」を<長澤まさみ>が演じています。監督は、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』・『そして、バトンは渡された』・『老後の資金がありません』などの<前田哲>が務めています。
<松山ケンイチ>演じる介護士の「斯波」は、その殺人を、〈救い〉であり、 〈介護〉であると主張します。それに対し、<長澤まさみ>演じる「大友」は「あなたがやったことに正義などない」と「斯波」の犯した罪を強く非難します。
「大友」が「大切な家族の絆を、断ち切って良いわけがない」と言えば、その絆こそが家族を苦しめていると反論する「斯波」。さらに、「僕はかつての自分が誰かにしてほしかったことをしただけです」と、連続殺人の動機ともとれる言葉を語り始めると同時に映し出されるのは、斯波の〈救い〉によって、家族を失ったものたちの様子。「私、救われたんです」 と語り、幸せそうな人生を送っている「坂井真紀」演じる<羽村洋子>、それとは正反対に「人殺し! お父さんを返せ!」と法廷で泣き叫ぶ遺族。
映像のラストでは、何者かを抱きしめるように倒れこみ一粒の涙を零す「斯波」と、誰かに頭を撫でられ、むせび泣く「大友」が映されます。二人の涙に込められた思いと、二人が主張するそれぞれの正義とは何か。救うために殺すことは、正義なのか、罪なのか。60秒という短い予告映像からだけでも、問題定義の大きさが感じ取れます。