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今年の読書(99)『ミトンとふびん』吉本ばなな(新潮社)

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今年の読書(99)『ミトンとふ...
今年最後の読書記になりそうで(100)の一区切りまでは到達できそうにありません。本書<吉本ばなな>の『ミトンとふびん』は2021年12月22日に刊行されています。

『夢の中』=(金沢)、『SINSIN AND THE MOUSE』=(台北)、『ミトンとふびん』=(ヘルシンキ)、『カロンテ』=(ローマ)、『珊瑚のリング』=(香港)、『情け嶋』=(八丈島)を舞台として6篇の短篇にはそれぞれ、別れや、大切な人の死、何かしらの喪失を経験した主人公が登場しています。ページをめくり始めて感じるのは、激しい言葉や展開はなく、おっとりとした主人公と穏やかな文章であるにも拘らず、いつしか〈吉本ワールド〉に引きずり込まれていました。

愛は戦いじゃないよ。愛は奪うものでもない。そこにあるものだよ。たいせつなひとの死、癒えることのない喪失を抱えて、生きていくということ。

凍てつくヘルシンキの街で、歴史の重みをたたえた石畳のローマで、南国の緑濃く甘い風吹く台北で。今日もこうしてまわりつづける地球の上でめぐりゆく出会いと、ちいさな光に照らされた人生のよろこびにあたたかく包まれる全6編が心にしみる短篇集です。
#ブログ #単行本 #読書

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