今年の読書(21)『悪の包囲』堂場瞬一(文春文庫)
4月
26日
警視庁サイバー犯罪対策課の<福沢一太>が、自宅マンションの部屋で殺害されます。本書の主人公である本庁を離れ立川中央署に移動した〈ガンさん〉こと「岩倉剛」の事件に関する異様な記憶力に目を付け、研究材料にしようと「岩倉」の離婚協議中の妻との共同研究で執拗に誘いをかけてきていた男でした。過去の因縁に加えて、事件の直前に本庁の食堂の中で小競り合いまで演じていたため、「岩倉」は容疑者扱いされ捜査本部からも外れざるを得なくなります。
20歳年下の恋人「赤沢実里」と共にいたという殺害時のアリバイがありながら若い女優ということで表に出せず、自らの潔白を証明するために独自に捜査を進める「岩倉」でしたが、尾行者にけがを負わされる羽目に陥ります。やがて事件の背景に、「岩倉」の宿敵ともいうべき謎の武器密売組織「METO」の存在が浮かび上がってきます。
「ラストライン」シリーズ全体を貫く横糸とも言うべき「METO」との戦いがまたも勃発。思いがけぬ「METO」からの反撃に、「岩倉」と仲間たちはどう立ち向うのか、手に汗握る攻防が繰り広げられます。
著者お得意の他シリーズの主人公たち、『警視庁失踪課』シリーズの「高城賢吾」・『刑事・鳴沢了』シリーズの「鳴沢了」・『アナザーフェイス』シリーズの「大友鉄」たちが脇役として登場してきますので、著者のファンはいつも通りニンマリと楽しさ倍増の一冊でした。