今年の読書(4)『約束』葉室麟(文春文庫)
1月
22日
敗者や弱者の視点を大切にした武士や農民の生きざまを丁寧に描く<葉室麟>の作品は大好きで、「今年の読書」でも数多く取り上げてきています。本書『約束』は江戸時代を離れ、明治維新当初の明治6年(1873年)を舞台に繰り広げられていきます。
現代の高校生男女4人が雷に打たれ、その拍子に意識が時を飛び、明治6年に生きる青年たちの身体に入り込みます。明治人と現代人の二つの意識を持つ若者らは、「西郷隆盛」、「大久保利通」、「勝海舟」など明治維新の立役者たちの身辺に仕えながら、否応なく歴史のうねりに飲み込まれ、やがて西南戦争が起ころうとしていました。
日本近代史としての曙の時期の主要人物たちの考え方や行動が、征韓論から西南戦争に至る経緯を軸とした史実に沿いながら描かれ、過去の歴史を知る若者たちを関与させながらの構成、面白く読み進めました。