今年の読書(73)『宴の前』堂場瞬一(集英社文庫)
9月
7日
民自党現職知事76歳の「安川美智夫」は、4期16年を務めて県知事を引退すると表明していましたが、政治路線を託す予定の「白井」副知事への後継者指名をためらっている間に「白井」が急死してしまいい、後継選びは難航します。一方、地元出身の42歳の元五輪メダリストの「中司涼子」が、突然無所属での出馬宣言を行い、〈冬季オリンピック誘致〉を公約に知名度の高さで支持者を伸ばしていきます。
危機感を覚えた「安川」は、民自党議員から候補者を選んでいくのですが、不倫問題や家庭問題でどれも失敗に終わり、最後の秘策として引退を取りやめ、自ら出馬することを決めます。
地元フィクサーや現職知事のスキャンダルを追う新聞記者、利権を争う県民達、各々の忖度や思惑が交錯する熾烈な選挙戦が始まります。
表題の〈宴〉は選挙を意味しており、選挙前の駆け引きを主体として、登場人物たちの「それぞれの事情」を多面的に描いていきます。地元新聞紙の記者「植田」を中心とする新聞社内の動きは、さすが元新聞記者の著者らしく現実感ある内容でした。