『明日をへぐる』@<今井友樹>監督
9月
6日
高知県の中でもローカルな方言である「へぐる」は、特殊な包丁で土佐楮の皮から表皮部分を削ぎ取る作業のことを指しています。高知県の山あいの町で楮を丁寧にへぐっていく90代の女性たち。楮の外皮を何度も削り落とし、繊維だけを残していきます。そうすることで、楮は1000年以上の耐久性を持つといわれる和紙へと生まれ変わっていくのです。その手わざや佇まいからは、世代を越えて受け継がれてきた山里の暮らしが見え隠れします。
手間もかかり大量生産もできず、継承者もいないことからやがて失われてしまうのではないかと言われているへぐりの作業をはじめ、楮を栽培し、紙を漉いてきた人たちの暮らし、そして和紙の文化そのものを通して、効率性や利便性を求めるがゆえに余裕が失われてしまった現代社会の日常を見つめ直していくドキュメンタリーです。
監督は、令和元年度変容の危機にある無形の民俗文化財の映像記録作成の推進事業として文化庁の『野見のシオバカリ』(2020年)やきょうされんの40周年記念映画である「夜明け前~呉秀三と無名の精神障害者の100年」(2018年)などの<今井友樹>が務めています。