『LETOーレトー』@<キリル・セレブレンニコフ>監督
7月
16日
ロシアの伝説的バンド「キノ」のヴォーカルである<ヴィクトル・ツォイ>と、彼の音楽的才能を見出したロックシンガーの<マイク・ナウメンコ>、そしてその妻<ナターシャ>の3人をモデルに、ペレストロイカ目前のレニングラードで純粋に自由と音楽を追い求めた若者達のひと夏を描いています。
ロックンロールで打ち鳴らす規制からの解放、若者たちの熱気と青春を彩るのは、70‘s~80’sのロックシーンを代表する名曲の数々です。 T・レックス『Broken Hearted Blues』、トーキング・ヘッズ『サイコ・キラー』、イギー・ポップ『パッセンジャー』、ルー・リード『パーフェクト・デイ』、デヴィッド・ボウイ『All the Young Dudes(すべての若き野郎ども)』など。ミュージカルともMVともとれる実にユニークでスタイリッシュな映像演出でカバーされる点も音楽ファンの見どころになっています。
このたび公開された映像には 、若い女性たちがライブ会場に違法に潜入する場面から始まります。「いくぞ」の掛け声とともにリハーサルの音が漏れ聴こえてくる流れは、物語の始まりを感じさせ、観客としてのの期待感を高めてくれます。さらに、彼女たちを追っていく長回しのカメラはライブの臨場感が伝わるだけでなく、徐々に大きくなっていく音楽、まばゆいスポットライト、ロックを打ち鳴らすギターボーカルという順に視覚と聴覚を刺激し、完全に映画の世界へと連れて行ってくれる。
ノリノリなロックミュージックが響き渡る中、観客は静かに座ってライブ鑑賞をしている場面も。80年代前半当時のソ連は、ロックミュージックと西洋の影響に敵対的な情勢でありながらも、ロックミュージックにひかれる若者たちも増えていった時代。その対立関係を象徴するように、刺激的な歌詞に険しい顔をしたり、音楽に乗せて体を揺らしている観客に注意する、ソ連当局者も映し出されています。