「旧大佛次郎茶亭」売りに出し
10月
10日
所有する大佛の養女である<野尻政子>さん(90)と息子<芳英>さん(70)が維持管理が難しくなり、売却を決めています。2人は建物を保存し、後世に残してくれる人を求めています。
趣あるかやぶき屋根の旧茶亭は、鶴岡八幡宮近くの閑静な住宅街にたたずむ。市によりますと、木造平屋で、床面積は約155平方メートル、敷地面積は約千平方メートル。1919(大正8)年ごろの建築とされています。
<大佛>が設立の発起人となった日本初のナショナル・トラスト団体「鎌倉風致保存会」によりますと、旧茶亭は大佛が書斎や文士仲間の交流の場などに使われていました。庭には四季を彩る花々が咲き、<大佛>は毎年しだれ桜が咲くころに多くの友人を招き、宴を開いていたとか。
建物は<大佛>が亡くなった以降、親族が維持管理を担ってきました。同保存会が貴重な建物を多くの人に見てもらおうと毎年4、10月に2回公開しており、市民にも親しまれていました。
市への寄贈も考えたものの、厳しい財政事情からうまく運びませんでした。<政子>さんが高齢であることも踏まえ、6月ごろに「建物を保存してくださる方に売却するほかに道はない」(芳英さん)と決めたようで、相談を受けた市内の不動産仲介業「鎌倉R不動産」が現在、買い取り手を探しています。景観の維持を前提とし、改修しても既存の建物の形を生かすことを考えてくれる人を対象にしているといいます。