今年の読書(18)『一切なりゆき』樹木希林(文藝春秋)
3月
6日
飾らない人柄で多くのファンに愛された<樹木希林>さん。映画、テレビ作品のほか、雑誌の対談やインタビューに多くのことばを残しています。本書はそれらを短時間でまとめたものです。出版・報道各社から記事転載の許可は得たものの、著作権者の連絡先がわからず見切り発車した部分もあるようです。奥付に「お気づきの方は編集部までお申し出ください」と記載されています。でも、このスピード感こそがヒットの理由でもあるようです。亡くなってから3か月での(2018年12月30日)刊行の素早さは見事です。生前色紙に書いていたことばからタイトルをつけたそうです。
「生きること」、「家族のこと」、「病いのこと、カラダのこと」、「仕事のこと」、「女のこと、男のこと」、「出演作品のこと」の6章から構成されています。
「仕事について」の一言を抜粋すると、その人生観が伝わるかもしれません。
「いってみりゃ私らは和え物の材料ですから」
「キレイなんて、一過性のものだから」
「CMの契約期間中は、その会社の人間だと思っています」
「テレビは演じたものが瞬時に消えていくから好きだったんです」
「役者は当たり前の生活をし、当たり前の人たちと付き合い、普通にいることが基本」
生前公開された最後の作品になった映画 『万引き家族』 の老婆の役について、「人間が老いていく、壊れていく姿というものも見せたかった」と語っています。
生前、約120本の映画に出演した彼女の巻末の年譜によりますと、初めて自ら企画も手掛けた62歳の女が38歳と偽って金を集め、出資法違反で逮捕された事件がモチーフとなっている映画『エリカ38』は、<樹木>さんの指名で<浅田美代子>が主演、<樹木>さんはエリカの母親役で出演しています。また、<桃井かおり>(67)主演、<樹木>さんは、旅館「茅ケ崎館」の女将(おかみ)として働く祖母役を演じているドイツ映画『Cherry Blossoms and Demons』が今年(2019年3月7日)ドイツ国内で公開されるようです。