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『狐罠』北森鴻(講談社文庫)

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『狐罠』北森鴻(講談社文庫)
店舗を構えず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董品を扱う<冬狐堂>という屋号の「旗師」<宇佐美陶子>を主人公に据え、骨董業界や美術の世界を舞台に繰り広げられる人間の「美」へのあくなき探求心を見事に描いた作品でした。

プロを騙す「目利き殺し」に「橘薫堂」の主人<橘秀曳>に見事に引っかかった<宇佐美>は、意趣返しとして<橘>に罠を仕掛けるために、別れた夫<プロフェッサーD>の伝手を頼り、贋作師<潮見老人>に仕事を依頼します。

かたや「橘薫堂」の外商を担当する<田倉俊子>が殺されて、スーツケースに詰め込まれた状態で発見、<俊子>のメモに<宇佐美>のことが残されていて、癖のある<根岸>と若手<四阿>両刑事の訪問を受けることになります。

古美術業界の欲望と打算の渦巻く世界を舞台に、横浜で起こった30年前の贋作事件「虎松事件」を絡め、<橘秀曳>を贋作ではめようとする<宇佐美>と、<俊子>殺しの捜査を交錯させながらミステリーとしての伏線を散りばめ、読者を最後の思わぬ結末まで引き付ける秀逸な一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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