表題作を含む5話の短篇が納められていますが、どれも主人公は退官した刑事を取り巻く物語ばかりです。 地道に一つの事件を解き明かしてゆくいわゆる警察小説ではなく、ひとりの人間としての行動やその友人・家族を絡ませ、心にナイフを突き刺すような痛みを感じさせる内容でした。 様々な理由を抱え、職を辞した刑事たちに訪れた人生最後の事件や生態を、見事に描写する文体は、どれも一気に読ませる構成で、鮮やかな結末にため息しか出ませんでした。