今年の読書(135)『佐保姫伝説』阿刀田高(文春文庫)
11月
5日
お得意のミステリーやブラックユーモアではなく、大人のメルヘンが阿刀田流に展開していました。
どの短篇にも気共通するのは、幼い子供の頃や物心付いた思春期、社会人になりたての頃の思い出や記憶を引き金として、自分の人生を顧みるという、歳を重ねた大人としての心境が、様々な主人公を通して語られています。
「あのときは」といった心境は、誰にもある分岐点として心の隅に刻まれているとおもいますが、どこにでもある日常生活の一場面を切り取っているだけに、人生の重みを感じさせる短篇集でした。