今年の読書(55)『氷姫』カミラ・レックバリ(集英社文庫)
5月
3日
女性の伝記作家である35歳の<エリカ>は両親が亡くなり、ストックホルムから生まれ故郷のフィエルバッカの実家に、遺品整理を兼ねて帰郷してきます。
帰郷早々、23年前に突然姿を消した親友<アレクス>が、自宅の浴槽で手首を切り死んでいるのを発見、彼女の両親から新聞に追悼文を書いてほしいと頼まれ、事件にかかわっていきます。
<アレクス>の夫や共同画廊経営者と接していく過程で、幼馴染の<パトリック>が地元の警察署に勤務していることが分かり、好奇心旺盛な作家として彼と私生活を絡めながら事件の捜査に乗り出していきます。
<エリカ>の妹の<アンア>は、夫から暴力を受けているにも関わらず両親の家を売り出すことを要求してきますし、昔のボーイフレンド<ダーン>は、殺された<アレクス>と不倫関係にあるのがわかるなど、小さな漁師町を舞台として複雑な人間関係が絡み合う重厚な構成に仕上がっています。
鼻持ちならない<メルバリ>署長とは対照的に、同僚の女性事務員<アンニカ>の高い資料作成能力に助けてもらいながら、<パトリック>の地道な捜査は思わぬ結末にたどり着きますが、本国の人気がよくわかるミステリーでした。