11月
25日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の草本〟❖ ’24-330 ❖ 》

北海道〜九州の沼沢地や河畔、水田用水路等に生え大形で群生する。
茎高1.5〜2m。根茎は太く横走し茎は円形、堅く平滑・無毛。
葉は長さ30〜50cm、幅25〜30mm、堅く平滑・無毛、縁はざらつく。
葉舌は毛状。葉鞘は長く、成長初期の頃には毛が密生する。
花序は長さ30〜50cm、先端はやや下垂し、ススキより密に小穂をつける。
枝は長さ15〜30cm、花軸と共に平滑・無毛、
各節から長短の小梗(枝)を双生して小穂をつける。
短い小梗は長さ3〜4mm、長い小梗は6〜7mm。
小穂は長さ5〜6mm、淡黄褐色、芒がなく基部に絹光沢のある毛をつける。
2個の包穎は薄膜質、白色の毛を生じる。 花期は8〜9月。(日本イネ科植物図譜)

(1)オギ Miscanthus sacchariflorus (Maxim.) Benth.
地下茎は長くはい,稈は 1 本ずつ離れて立つ.
高さ 2.5m に達し,大群落をつくる.基部の葉は早く枯れる.
花序は頂生し主軸は短い.花期は 9~10 月.小穂は長さ約 5mm.
小穂の基部や包穎から銀白色の長い軟毛が生え,
毛を含む小穂の長さは包穎の 2~3 倍になる.
本種の特徴として,「基毛が長い」と図鑑等に書かれているが,
必ずしも基毛は長くない.

県内では山地を除き全域に普通.河川敷や湿地に生える.
*
見た目は ススキ とそっくり。しかしいくつかの違いがある。
まず、ススキは一つの株根から多数の茎がまとまって出るが、
オギは根が横に伸びるため、一本づつ並んで出る。
また茎に竹の様な節(膨らみ)があり、小枝が出る。
穂先にある小穂の綿毛がオギのほうがずっと長く、
色が純白で銀色に見える。
云うは易し、見るは難し!!年寄は注意深く観察しないと、、、。
水辺で近寄れないから。ポイントを抑えて他人に説明する。
オギの群生は、見るものの心を掴んではなさない。
神奈川県の丹沢山地から相模湾に朗々と流れる相模川。
川の下流近い所、寒川に鎮座する寒川神社(雨の神様)。
その近くの河原に荻の群生地がある。そこでの景観は圧巻だった。
子供の頃に観た光景は、緑一線の奥に大山が鎮座していた。
時が流れると、そこの光景は、白い住宅中層建物が一線で眼の前を覆う。
遠景は変われど“オギ”の美しさは変わらない。白銀の晩秋景観自体は。
「令和陸年(皇紀2684年)11月25日」
11月
24日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-57〟❖ ’24-329 ❖ 》

学名:Orostachys japonicus (Maxim.) Berger.
synonym Sedum erubescens Ohwi
別名:ヒロハツメレンゲ

在来種で本州(関東地方以西)、四国、九州に自生している。
和名は葉が獣の爪のように先が尖り、仏の蓮華座を思わせる事による。
葉は長さ3~6㎝、幅0.5~1.5㎝の披針形、多肉質、先が尖る。
ロゼットの中心から長さ10~30㎝の長い花茎を伸ばし、
白い花を密につける。花は直径6~8㎜。
花弁は5個、白色、披針形。雄蕊10個、葯は紅色。雌蕊5個。
《 未見の 草本〝爪蓮華〟》

(1)ツメレンゲ Orostachys japonica (Maxim.) A. Berger
花は 9~10 月,白色.葯ははじめは赤黄色である.
本州,四国,九州;朝鮮,中国(東北部)に分布.
県内では愛川町半原,津久井町青根・東開戸,藤野町などにわずかに見られる.
愛川町では川岸の岩礫地にイワヒバなどにまじって生えている.
『神植目 33,神植誌 58』は丹沢塔ノ岳を産地としてあげている.
『神 RDB06』では絶滅危惧ⅠA 類とされた.
*
我が家のメモでは、1990年代初頭の11/24に見た、とある。
場所の詳細が帰されていないが、与瀬辺りらしい。
今の相模原市から上野原市あたりだろう。
現地探索してみたく、備忘録とする。
「令和陸年(皇紀2684年)11月24日」
11月
23日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-56〟❖ ’24-328 ❖ 》

学名:Acer amoenum Carr.
Acer palmatum Thunb. subsp. amoenum (Carriere) H. Hara
別名:ヒロハモミジ(広葉もみじ)

北海道中部以南、太平洋側は青森県以南、日本海側は福井県以南〜九州に自生。
多少湿り気のある日当たりのよい斜面に生える。太平洋側の山地に多い。
高さ10〜15m、直径50〜60cmになり、樹皮は灰褐色。
若木ではなめらかだが、のちに縦に浅く割れる。
若枝には毛があるが、のちに無毛となる。
葉は対生。葉身は直径7〜12cmで掌状に5〜9裂。基部は浅いハート形。
裂片は楕円形または長楕円状披針形で先は尾状に尖り縁に細かい鋸歯がある。
葉裏面の脈腋に毛がある。葉柄は葉身の2分の1〜5分の4の長さ。
成葉では無毛、ふつう葉柄の上面に溝がない。黄・紅葉が美しい。

果実は翼果。分果は長さ2〜2.5cm。
翼はやや鋭角または鈍角に開く。6〜9月に熟す。花期は4〜5月。
冬芽の芽鱗は4対で外側の1対だけ見える。
基部は黄褐色の膜質鱗片に包まれ、鱗片のふちに毛が並ぶ。
頂芽はふつうできず、枝先に仮頂芽が2個つく。
葉痕は三日月形。(樹に咲く花)
《 私的彩好の木〝大紅葉〟》

(10)オオモミジ Acer amoenum Carrière
雌雄同株の落葉高木.よく植栽され,数多くの園芸品種がある.
前種とよく似るが,葉が大きいこと,単鋸歯であることのほかに,
分離翼果の開度 120~130 度で翼が長いこと,
果皮が厚いことでも区別できる.
ただし若い木ではしばしば重鋸歯となるので注意を要する.
また,葉の切れ込み方には変化が多く,
葉の裂片が幅広いものはヒロハモミジ form. latilobatum (Koidz.) K.Ogata,
深裂するものはフカギレオオモミジ form. palmatipartitum (Koidz.) K.Ogata
と呼ばれることがあるが,変異は断続的であり,
県内でもさまざまなタイプのものが見られる.
4 月ごろ開花し,新枝の先に暗紅色の花を散房状につける.
北海道,本州(東北地方~北陸地方までの日本海側を除く),四国,九州に分布する.
山地のブナ帯下部の落葉広葉樹林を中心に分布する.
県内では丹沢,箱根,小仏山地のシイ・カシ帯~ブナ帯下部に普通に見られるほか,
多摩丘陵,三浦半島,大磯丘陵などにもわずかに見られる.
なお,1 年中葉が赤い園芸品種をノムラカエデと呼び,
近年,自然公園内の園地や歩道沿いにも植栽されていることがある.
また,そうした植栽には,日本海側に分布する変種であるヤマモミジ系
と考えられる園芸品種もまざっている.
自然公園内への植栽は,本来の景観を大事にする意味からも,
フローラの混乱を防ぐためにも,自生種に限るべきであり,
園芸品種や近縁の別種が分布しているような種は避けるのが当然であろう.
こうした点で関係者の配慮を望みたい.
*
オオモミジはイロハカエデ・ヤマモミジによく似ている。
イロハカエデの変種、ヤマモミジの亜種とも分類されてきた。
オオモミジは、葉が大きく鋸歯の細かな所、色合いも微妙。
山間に見る“褐葉”色、その先に魅せる黄葉から紅葉への移り変わり、わび・さびの世界。
11月
22日,
2024年
《 雅羅・/・〝不明の葉〟❖ ’24-327 ❖ 》
今年も泉の森で魅せてくれた“杜鵑草”。
この野草の特徴としては、紫色の斑紋がある。
斑紋には横縞模様から大小の斑点まで様々。
ユリ科ー カロコルツス亜科ーホトトギス属。
ホトトギス属植物は19種あり日本には12種分布している。
この内の10種は日本だけに生育する日本固有種。
分布の地図からすると日本はホトトギス属分化の中心地。
1,白色(基本色)で、上向きに咲く花を着け、
茎に斜上する毛の出るホトトギス節にホトトギスとタイワンホトトギス。
2,白又は黄色(基本色)の花を上向きに咲かせ、
茎に斜め下向きの毛の出るヤマホトトギス節に、
ヤマホトトギス、ヤマジノホトトギス、セトウチホトトギス及びタマガワホトトギス。
以上の中で泉の森で見られるのは、ホトトギスとタイワンホトトギス、
ヤマホトトギスの3種と確認している(野生種・園芸種を問わず)。
こうした杜鵑草の中には、自然交雑したと見れるものも居る。
観察しているものからすると楽しいかぎりだ。
泉の森植物を知り尽くしている観察者がおられる。
保護・保全をされている中での貴重な情報を頂いた。
「以前、森の中に白い単色の杜鵑草が立っていた由。
詳細観察しようと再観察に行くと盗掘されてしまっていた。
今年、その周辺で新茎・葉を見つけた事を教えてくださった。」
生育地を案内して頂き観ると、唸ってしまった。
かわいい互生の葉、茎等を見ると、ヤマホトトギス!!
一般的に云われている白い、白系単色花弁の杜鵑草なのか??
よく紹介されているシロバナホトトギスは、園芸種か。
野生自生種の杜鵑草は、シロバナヤマジノホトトギスと云う由。
眼前の若い茎(葉も)の姿は、ヤマホトトギスそのものだった。
来年へに向けて生育を観察を続けたい。楽しみだ。
11月
21日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-55〟❖ ’24-326 ❖ 》

センボンヤリ(千本槍) キク科(Asteraceae)
学名:Leibnitzia anandria (L.) Nakai
別名:ムラサキタンポポ(紫蒲公英)

センボンヤリ(千本槍);多年草
日本全土の山地や丘陵の日当たりのよい草地などに生える。
葉は根もとに集まってロゼット状になる。
春の葉は卵形で、縁には欠刻があり、裏面には白いクモ毛が密生する。
秋の葉は長さ10〜16cm、幅3〜4cmの倒卵状長楕円形で、羽状に中裂する。
頭花にも2型ある。
春の花は直径約1.5cmで、高さ5〜15cmの花茎の先に1個つく。
頭花はまわりに裏面が紫色を帯びた舌状花が1列に並び、
中心部に筒状花がある。
夏から秋には高さ30〜60cmの花茎をのばし、先端に閉鎖花を1個つける。
閉鎖花は筒状花だけが集まったもので、
長さ約1.5cmの総苞に包まれたまま実る。
そう果は長さ約6mm。冠毛は淡褐色で長さ約1cm。
花期は4〜6月、9〜11月。(野に咲く花)
《 私的未見の花・魅せる花〝千本槍〟》

[Ⅰ.センボンヤリ亜科 Subfam. Mutisioideae]
(亜科の解説と属への検索表:勝山輝男)
キク科の初期に分化したグループの大部分は南アメリカに産するが,
本亜科のみが日本に産する.
南アメリカを中心に約 46 属がある.
日本にはセンボンヤリとノブキの 2 属 2 種のみがある.
A.頭花の中心の筒状花は 2 唇形の花冠をもつ................... 1.センボンヤリ属
1.センボンヤリ属 Leibnitzia Cass.(佐々木あや子,『神植誌 01』:大場達之,図:佐々木あや子)
多年草.葉は根生しロゼット状.
頭花は長い柄の先に単生し,春に咲くものは舌状花があり,
夏から秋に出る花は閉鎖花で,筒状花のみからなる.
葉は頭大羽状(ダイコン状).総苞は管状.花床は平坦で浅い穴がある.
小花は2 唇形.痩果は偏平で,短毛があり,多数の冠毛がある.
東アジア~ヒマラヤと北アメリカに 6 種があり,日本には 1 種のみがある.
(1)センボンヤリ Leibnitzia anandria (L.) Turcz.
春に咲く舌状花は白色で下面は紅色を帯びるためムラサキタンポポの名もある.
葉にはクモ毛があり,下面には密生して白く見える.
また秋の閉鎖花は長く伸ばした花茎の先につく.
北海道,本州,四国,九州;東アジアの東北部に分布.
シイ・カシ帯~ハイマツ帯に分布.
乾いた林,草原,崩壊地周辺などに生える.冲積地には見られない.
*
日本の各地で見られる野草のようだが、神奈川県内では東側地域では見かけない。
春・秋と二度開花するようだ。秋に咲く花は、特徴的に由。
秋の花茎、その姿を千本の槍に見立てたとか。
センボンヤリの春花は、黄色い管状花。一見するとタンポポ!!
それ故に、ムラサキタンポポと別名する由。
名前の由来となっている秋の花は、花が開かずに実ができる閉鎖花。
実際に観察したい千本槍。詳しい解説は下記を参考にされるといい。
11月
20日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-54〟❖ ’24-325 ❖ 》

学名:Limonium tetragonum (Thunb.) A.A.Bullock
synonym Limonium japonicum (Siebold et Zucc.) Kuntze

イソマツ属の在来種で本州(太平洋岸)、四国、九州に自生する。
ハマサジは、塩湿地に生える草本。国の絶滅危惧Ⅱ類。
和名は葉の形が匙に似て、海岸に生えることによる。
2年草、高さ30~50㎝。
葉は根際に束生し、長さ8~17㎝のへら形、質は厚く、全縁、
先は鈍頭~鋭頭、基部は次第に狭くなり葉柄となる。
葉の中央から花茎を伸ばし、著しく分枝し、
円錐花序に多数の小穂をつける。
小穂は稔性の花1個と不稔性の花1個からなる。
小穂の基部の苞は1個つき、緑色、長さ2~3㎜、鋭頭。
その内側に2個の小苞がある。
上側の小苞は大きく、長さ約4㎜、下側の小苞は長さ1~1.5㎜。
萼は長さ5~6㎜の筒状、先が白色で浅く5裂し5稜があり果時にも残る。
花冠は長さ約7㎜、萼より長く下部が白色、先が黄色、
深く5裂し、裂片はさじ形。雄しべ5個。
雌しべ1個、花柱5個。果実は長さ2.5㎜の紡錘形の痩果。花期は8~11月。
*
かような解説文を拜すると、一度は見に行かないと。。。!
《 私的未見の花・魅せる花〝浜匙〟》
河口の汽水環境を代表する植物に由。
本州の宮城県以南~九州に分布するらしいが、
関東地方の海岸線は、環境の多くが埋め立てられてしまい、
目にする機会がありません(引用文)。
我が家にあるメモだけでは、何処で観たのか不明。
九州の何処かで観たらしい。
今でも群生している場所は、あるのだろうか??
「令和陸年(皇紀2684年)11月20日」
11月
19日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-53〟❖ ’24-324 ❖ 》

アケボノシュスラン(曙繻子蘭) ラン科(Orchidaceae)
学名:Goodyera foliosa (Lindl.) Benth. ex C.B.Clarke var. laevis Finet

本州〜九州の山地の林内に生える。
茎の基部は地をはい、上部は斜上し、高さ5〜10cm。
葉は数個互生し、長さ2〜4cm、ふちは波打つ。
茎頂に数個の淡紅色の花をややかたよってつける。
萼片は狭卵形で長さ約8mm、側花弁、唇弁もほぼ同長。
側花弁の先端は萼片に少し合着する。
唇弁の基部は膨らむ。花期は8〜9月。(山に咲く花)
《 私的未見の花・魅せる花〝曙繻子蘭〟》

(4)アケボノシュスラン Goodyera foliosa (Lindl.) Benth. ex C.B.Clarke var. laevis Finet;
G. foliosa var. maximowicziana(Makino) F. Maek.; G. maximowicziana Makino
常緑性.茎は高さ 5~10cm.
葉は 4~6 枚が互生し淡緑色の主脈を中心に縦脈 3 本が目立つ.
花序は無柄で,軸にまばらに腺毛がある.花期は 9~10 月.
花は花軸の片側につけ淡紅色をおびた白色.苞は披針形.萼片は狭卵形.
側花弁は広倒披針形で背萼片と重なる.
唇弁は卵形で基部は胞状に膨らみその内側に腺毛状の毛がある.
小嘴体は細長く2 裂する.蒴果は長卵形.
北海道,本州,四国,九州;朝鮮,中国,台湾,インド,ヒマラヤに分布する.
おもに落葉樹林の林床に生える.
県内では箱根山麓と三浦半島の樹林内に点在するが少ない.
『神 RDB06』では絶滅危惧Ⅱ類とされた.
基本変種のツユクサシュスラン var. foliosa は
全体に大きく,九州~琉球,伊豆諸島,小笠原諸島に分布する.
*
八丈富士・三原山の標高の高い場所に自生が観られる由。両親のメモ。
茎の基部は地表近くをはう。環境の厳しさを伺わせる。高山植物に通じる。
メモを読むと、刺激が強すぎる。
「令和陸年(皇紀2684年)11月19日」
11月
18日,
2024年
《 雅羅・/・襍録〝東山薊-Ⅱ〟❖ ’24-323 ❖ 》
学名:Cirsium microspicatum Nakai
本州(東北地方南部から近畿地方の主に太平洋側)に自生している日本固有種。
先月、10月17日付けBloguruで東山薊を記した。
その後、泉の森植物観察精通者の御三方に助言を頂けた。
10月~11月に観察を続けると色々とわかって来る。
生育の過程、環境の違い等々興味・関心がたかまる。
数メートルしか離れていないのに環境的生育差が大きい。
11月
17日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の樹葉〟❖ ’24-322 ❖ 》
学名:Celtis sinensis Pers.
synonym Celtis sinensis Pers. var. japonica Nakai
別名:エ、エノミノキ、エンノキ、ヨノキ等
エノキ(榎木);
近在の社寺境内、公園、山地に普通に見られる。
大木になると、1本でも林のような大きな梢を作る。
大木に育つが先駆種で暗い樹林内では育たない。
林縁部や新しく開けた場所に多く見える。
樹皮は厚く灰黒色ぽい小さな皮目でざらざら感がある。
横方向に皺がより象の皮膚の様にも見える。
葉は互生、左右不同の広卵形または楕円形。
縁の上部に鋸歯がある。葉の基部から出る3脈が目立つ。
これがエノキの葉の特徴。雌雄同株、雄花・両性花。
4月に新枝の下部あるいは葉腋に雄花をつける。
そして、新枝上部の葉腋に両性花が付く。
枝の上で雄蕊の開いていない花が両性花で雄花が早く開花。
果実は核果で10月頃に赤褐色に熟す。種子は果実に比べ大きい。
食べる部分は少ないが、小鳥の好物の様で結果、鳥の広散布になる。
昔は、子供のおやつだった由。
種子の表面に皺があり、ひび割れ模様ができる。
鳥の消化器を通過できるように堅い(自然界の妙)。
1年枝は、春になるとすべての芽から一斉に芽吹く。
しかし基部の方の枝はあまり成長せず、翌年には枯れてしまう。
エノキの黄葉。ケヤキより葉が厚く、艶のある黄色は鮮やか。
エノキノ花は、ケヤキの花と良く似て識別が難しい(私自身だが)。
葉は、葉脈の形で識別できる。
《 黄葉が眩しい。輝いて魅せる木〝榎木〟 泉の森 》

エノキ Celtis sinensis Pers.;
C. sinensis var. japonica (Planch.) Nakai; C. japonica Planch. in DC. Prodr.
17: 172 (1873)の基準産地の 1 つは横浜.
樹皮は灰褐色.1 年生枝には軟毛がある.
葉は左右不同で,先の方半分に鋸歯があり,長さ 5~9cm,
上面はほとんど無毛,側脈は 3~4 対で先端は鋸歯に達しない.
冬芽は軟毛があり,芽鱗は 2 対.雌雄同株.花期は 4~5 月.
果柄は長さ 0.5~1.5cm,果実は赤褐色に熟し,
直径 6~8mm で食べられる.材は建築,器具などに用いられる.
本州,四国,九州;朝鮮,中国の暖帯~温帯に分布.
人里に多く,昔から一里塚として街道沿いに植栽された.
県内ではブナ帯を除いて広く分布する.
「余録」
「一里塚」・・一里塚を広辞苑で調べると
「街道の両側に一里ごとに土を盛り里程の目標にした塚。多く榎を植えた。」
古くは平安時代末期に奥州藤原氏が里程標を立てたのが始まりとされる。
室町時代の一休和尚の歌に
「門松は冥土の旅の一里塚 目出度くもあり目出度くもなし」があり、
一里塚の言葉は一般化していたことが分かる。
江戸時代に主要街道の整備と共に一里塚も整備された。
その整備の際に、並木としては松や杉を植え、
一里塚にはエノキが植えられた。
エノキは成長が早く枝を繁らせ、
よく根を張るので塚の土盛りが崩れるのを防ぐので
採用されたと解釈できるが、いろいろな説がある。
当時の総奉行大久保長安が
「一里塚には余の木(松以外の木)を植よ」
との家康の命を聞き誤りエノキを植えた、
という説が面白いとしてあちこちで紹介されている。
明治36年刊行の「大日本有用樹木効用編」には、
エノキは生でも燃えやすいので軍事上、
夜戦のときに使うことができるとして
植えられたという説が紹介されている。
実際に五街道の一里塚の樹種を調べるとエノキは過半数(55%)を占め、
以下、松、杉、栗、桜と続くようだ。
塚の大きさは一般に五間(9m)四方、高さは一丈(3m)で、
道の両側に作られたのでかなり大がかりなものだった。
現在でも各地域の史跡として保存されている場所が多い。
地名にも笹塚など「塚」の字が残っている。
一里塚は一里約3.9Kmごとに設けられた。
同様の目的で作られたものは他の国(単位)にもあり、
マイルストーンとかキロポストと呼ばれる。
マイルストーンはその名の通り1マイルごとに石の構造物が置かれた。
ローマ帝国のアッピア街道が始まりとされる。
古代ローマの1マイルは1000歩の距離で約1.5Kmとされ、
現在の国際マイルは約1.6Kmである。
一里塚もマイルストーンも、
大きなプロジェクトの途中の区切りの比喩で用いられることが多い。
「令和陸年(皇紀2684年)11月17日」
11月
16日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の樹実〟❖ ’24-321 ❖ 》
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北海道、本州、四国、九州、沖縄、と全国各地で普通に見られる。
山野の林内や林縁に生え、樹高3m前後。樹(枝)皮は灰褐色。
はじめ細かい星状毛があるが、のちに無毛。皮目は縦長の楕円形。
幹は、灰褐色で枝は真っ直ぐに斜上する。
樹幹自体、真っ直ぐで堅く強い。道具の柄や杖、箸に用いられた。
葉は対生し、葉身は楕円形または長楕円形で、薄い洋紙質。
両端は次第に尖り、縁全体に細かい鋸歯があり両面とも無毛。
裏面には淡褐色の腺点が散在する。葉柄は長さ2〜7mm。
6~7月に葉腋から集散花序を上向きに出し、
淡紫色の花を多数開く(コムラサキより花の密度は少ない)。
花冠は長さ3〜5mm、上部は4裂し、裂片は平開する。
花弁は筒状で4裂、雄蕊4本、雌蕊1本。
雄蕊、雌蕊ともに花冠の外へ長く突き出る。
10月~11月に、球形の果実(核果)が紫色に熟す。
核果は直径3~5㎜、核(種子)は長さ2~2.5㎜、淡褐色。
落葉後も果実は残る。
属名のCallicarpaは「美しい果実」の意。
英名は、Japanese beauty-berry「日本の美しい実」。
葉は、気候条件によって黄葉の色合いは異なる。
似た仲間にコムラサキやヤブムラサキがある。
更にはヤブムラサキとの交雑種にイヌムラサキシキブがあり、
葉の裏面に星状毛が残る。
ムラサキシキブ・・・葉の鋸歯はほぼ全体。花序は腋生かわずかに上から出る。
コムラサキ・・・・・葉の鋸歯は上方のみ。花序は葉腋より少し上から出る。
《 果実と黄葉の色合いが綺麗な〝紫式部〟 》
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1.ムラサキシキブ属 Callicarpa L.(関口克己,『神植誌 01』:城川四郎,図:城川四郎)
高木または低木,葉は対生し,腺点をもつものが多い.
花は葉腋から出る集散花序につく.花冠は短い筒部があり先は 4 裂する.
雄しべは 4 個,同長で花冠につく.柱頭は 2 裂,核果は球形.
世界に約 140 種,ヨーロッパ,北アメリカ,アジアに広く分布する.
日本には 6 種がある.県内には 2 種が自生し,逸出が 1 種ある.
A.枝,葉,花序は萼とともに密に星状毛があり,萼は深裂する.
葉の両面に腺点がある ..............(1)ヤブムラサキ
A.新芽や花序には星状毛が目立つが,他はほとんど無毛に近い.
萼は浅く裂け低い 4 歯をもつ.葉は下面だけ腺点がある
B.花序は腋芽に接するか,またはやや腋芽の上から出る.
鋸歯は葉の基部近くから出る
C.有花枝の葉は長さ 14cm 以下,葉面に光沢はない(無花枝の葉は長さ 15cm を超えることもある).
山地~丘陵に生える........................................................................(2a)ムラサキシキブ
C.有花枝の葉は長さ 15cm を超え,枝も太く,葉面はやや光沢がある.
海岸近くに生える....................................................................(2b)オオムラサキシキブ
B.花序は腋芽の上から出る.
鋸歯は葉の半分から上に出てやや粗い .............................................(3)コムラサキ
(1)ヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold & Zucc.
落葉低木.全体に星状毛が多いが,葉の上面は単純短毛がある.
本州(宮城県以西),四国,九州;朝鮮半島に分布する.
県内では箱根,丹沢,小仏山地,多摩丘陵,三浦半島に分布するが,
沖積地にはほとんど見られない.特に葉の小型のものをコバノヤブムラサキ
form. ramosissima (Nakai) W.T.Lee という.
標本:コバノヤブムラサキ 湯河原町 1985.5.23 山口育子 KPM-NA1018296;
厚木市七沢 1996.5.15 諏訪哲夫 ACM-PL007282.
(2a)ムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunb. var. japonica
落葉低木.花も果実も淡紫色で,特に果実の優美さを才媛,
紫式部の名をかりて美化したものという.
成葉では全体ほぼ無毛であるが,脈腋には微細な星状毛が残る.
毛の量はかなり変異がある.
北海道,本州,四国,九州;中国,朝鮮半島に分布.
県内では全域にごく普通に分布する.
小葉品をコバムラサキシキブ form. taquetii (H.Lèv.)Ohwi といい,
本品種は山地分布である.
特に箱根に典型的な小葉品の分布が多いが,開花個体はほとんど見られな
い.
果実の白くなるものをシロシキブ form. albibacca H.Hara という.
(2b)オオムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunb. var. luxurians Rehder
前種の海岸型である.花序がやや腋上性の傾向がある.
ムラサキシキブとの中間形があり連続する.
本州,四国,九州に分布する.県内では沿海地を中心に分布している.
→(3)コムラサキ Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch
落葉低木.ムラサキシキブの名でよく栽培されている.
果実が白色に熟するものもある.
箱根,丹沢,三浦半島以外の地域で採集されているが,
県内に自生していたものではなく,栽培品の逸出と考えられる.
雑種
1)イヌムラサキシキブ Callicarpa ×shirasawana Makino
ムラサキシキブとヤブムラサキとの雑種と考えられる.
ヤブムラサキに比べ各部の星状毛が少なく萼は中裂する.
横浜市,川崎市,相模原市などで採集されている.
*
「余録」
ムラサキシキブ名に付いて興味深い資料がある。
江戸期・町人文化の粋、化政文化(1804年-1830年)時代。
園芸の隆盛を極めた頃に記された文献に『本草綱目啓蒙』がある。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)32 紫荊の条に、
「ヤマムラサキト云、一名ムラサキシキミ 紫式部 タマムラサキ
コメウツギ紀州 コメゴメノ木越後」。
この文面で、“一名ムラサキシキミ”に関心を持った。
ムラサキシキミ「紫重実」と書くが、重実とは実が重なり合うを意味する。
紫の実が重畳と重なり合うように稔る様だが、ムラサキシキブの同義語。
京都地方に伝わる古くからの呼び名。
こうした呼び名が、いつしか紫式部に落ち着いたか。和の美的表現。
「令和陸年(皇紀2684年)11月16日」