今年の読書(57)『探花』今野敏(新潮文庫)
10月
18日
待ちに待った2022年1月に単行本が刊行されています「隠蔽捜査」シリーズの『探花』の文庫本が、2024年9月1日に発売されています。
前作『清明』に続くスピンオフ2作品を含むシリーズ11作目になりますが、現時点で『審議官隠蔽捜査9・5』と『市や隠蔽捜査10』の単行本が刊行されていますので、まだまだシリーズとして楽しめそうです。
横須賀基地付近で殺人事件が発生。神奈川県警の刑事部長「竜崎伸也」は、目芸者の証言により犯人は米軍基地関係者かもしれないことから、米海軍犯罪捜査局から「リチャード・キジマ特別捜査官」の参加を認め、異例の日米合同捜査が始まります。
その一方、同期キャリアで席順1位の腹の内を見せぬ男「八島圭介」が警務部長として県警本部に着任してきます。「八島」には前任地福岡で、暴力団と付き合いのある国会議員「大西渉」との黒い噂がつきまとっていました。
横須賀署に泊まり込む形で捜査を始める「竜崎」でしたが、妻からポーランドに留学している息子の「邦彦」が、現地警察に逮捕されたようだとの連絡があり、「竜崎」は外務省の「内山」に調査を依頼します。
麻薬での前科がある息子だけに気になる「竜崎」ですが、合同捜査が生む軋轢を乗り越え、殺人事件の捜査を進めていきます。息子の事件で左遷され出世コースを外れている「竜崎」は頭脳と決断力で、本庁の「伊丹」の協力もあり、難局を打開してゆきます。
ちなみにタイトルの「探花」は、華僑の最終試験の順位で三番目を指しています。席順1位の「八島」、2位の「伊丹」、3位の「竜崎」と、それぞれのキャリア志向と警察官としての矜持のつばぜり合い、面白く読み終えました、