今年の読書(41)『軽いノリノリのイルカ』(マガジンハウス)
8月
8日
俳優・タレントの<満島ひかり>(38)の生み出した「回文」をもとに<又吉直樹>(お笑いコンビ・ピース)が「ショートストーリー」を書きおろし、女性向けファッション雑誌『GINZA』(マガジンハウス)に連載されていました『軽いノリノリのイルカ』が、2024年7月17日に刊行されています。
上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる回文「痛い頭に見聞きした詩 遠い価値観なのに 無二のなんか近い音 親しき君にまた会いたい」など、このポエムのような文章の作者が<満島ひかり>です。
回文→物語という文章メインの企画を、文学系の雑誌ではなく、ファッション誌『GINZA』で展開したとても贅沢な連載企画でした。
本書は、雑誌『GINZA』連載30回分を全収録、書籍用、書き下ろし回文&ショートストーリー 11本、<満島ひかり>さんと回文作家との対談2本(石津ちひろ・コジヤジコ)、<又吉直樹>さん考案の回文に、<満島ひかり>が応える連載時の逆バージョン、等盛りだくさんな内容で、ふたりの言葉遊びを、カラフルにグラフィカルに楽しめる仕上がりになっています。
本書の表紙写真が、1990年代初頭より本格的に写真を始め、独学で自身のスタイルを極めていった異色のフォトグラファー<佐内正史>ということも手にした要因です。1997年に発表した写真集『生きている』は、本質的には異なれど、どことなくありふれた、クルマ、庭木に水をやる人、電線、行き止まりの道、誰もいないグランド、観葉植物などが脈絡なく続きますが、その切り取り方、さらには対象への深い洞察を見たとき、こういう写真集が成立すること自体に驚きを感じた写真家でした。