今年の読書(49)『焦眉』今野敏(幻冬舎文庫)
8月
13日
東京都世田谷区の高級マンションの駐車場で投資ファンド会社を経営する<相沢和史>が刺殺され、捜査一課の「樋口顕」班が現場に急行します。
警視庁が所轄の北沢署に特別捜本部を設置すると、東京地検特捜部の検事<灰谷卓也>が、二課の係長と同行して現れます。
<灰谷卓也>は与党の大物議員を破り当選した野党の衆議院議員<秋葉康一>を政治資金規正法違反容疑で内偵中でした。
市民運動家の<秋葉康一>は殺された<相沢和史>と大学時代から親しかったらしく、過去に選挙資金規正法に関わる関係を疑われた経歴があり、殺害現場付近の防犯カメラには<秋葉康一>の秘書<亀田至>が映っており、それらの事実だけを理由に<灰谷卓也>は、<樋口顕>が証拠不充分を主張するも秘書を逮捕してしまいます。
選挙と警察組織、地検と警察との対峙などを縦軸に、自己評価が低く、上司の顔色を窺い、部下を気遣い、一人娘「照美」を気遣う等身大の刑事の生き様を照らし出す「樋口顕」の人間性を横糸として織り込みながら、骨太の警察小説が楽しめました。