今年の読書(41)『琥珀の夢(上)』伊集院静(集英社文庫)
5月
3日
明治12年1月30日夜明け。大阪船場、薬問屋が並ぶ道修町に近い釣鐘町で一人の男児が産声を上げました。両替商、「鳥井忠兵衛」と「こま」の4人目の子どもである次男「信治郎」が誕生しています、後に日本初の国産ウイスキーを作り、今や日本を代表する企業「サントリー」の創業者の誕生でした。
次男坊の宿命で「信治郎」は13歳で薬種問屋「小西儀助商店」に丁稚奉公に入ります。小西商店では薬以外にウイスキーも輸入して扱っていましたが、「儀助」は国産の葡萄酒造りを考えていました。しかし当時の葡萄酒はアルコールに香料など様々なものを混ぜ合わせた合成酒でした。「信治郎」は夜毎、「儀助」と葡萄酒造りに励みながら、商人としてのイロハを叩き込まれると共に、合成酒づくりの基本を身に着けていきます。
丁稚奉公も終わり、いよいよ「信治郎」は自分の店を持つまでになりますが、兄「喜蔵」からもらった開店資金を使い突然神戸港から小樽までの客船の一等客になり、外国人たちの交流を楽しみ大阪に戻ってきます。開店資金を散財しますが、のちにこの経験が生きてくるのでした。
気になったのは「信治郎」の性格として、先輩の奉公人に引き合わされた子持ちのうどん屋「芳や」の女将「しの」と関係を持ち、その後もたびたび登場してくるのですが、単なる女遊びで終わるのか、あやふやのまま上巻が終ったことです。