今年の読書(17)『バー「サンボア」の百年』新谷尚人(白水社)
4月
24日
本書『バー「サンボア」の百年』は改めて1世紀の歴史を振り返り、創業以来の精神を後世に伝えようという構成です
日本のバーの老舗としては東京・浅草の「神谷バー」が有名です。こちらは銘酒店として1880年4月に創業し1912年に店舗内部を西洋風にして屋号を「神谷バー」と改め、今も大正時代に建てられた建物で営業しています。
その「神谷バー」に匹敵する歴史を誇るのが「サンボア」です。「神谷バー」が、安価な酒「電気ブラン」で知られ、非常に大衆的で、どちらかと言えばビアホールに近いのに対し、「サンボア」は正統的、伝統的なバーのたたずまいです。
本書はサンボア創業、戦後の再出発、サンボアのDNAの三章に分かれて書かれています。現在は創業者<岡西繁一>から直接暖簾を継いだ3つの家系の3代目と、サンボアで修業した計12名のマスターが「サンボア」を名乗り、14店の「サンボア」を営んでいるという。それぞれのサンボアの歴史、店を立ち上げ、背負ったマスターたちの思いなどが紹介しています。
驚くのは、年表や系図はもちろん、主要人物の一覧表が付いていること。サンボアの歴史を形作った24人の経歴が並び、伝統と真髄を維持してきたのはサンボアだという自負があふれている構成です。