『ありふれた魔法』盛田隆二(光文社文庫)
10月
20日
2歳年上の妻<仁美>とは社内結婚で、長女<鈴花>は中学2年生を筆頭に男の子が二人いますが、二男の<健斗>は耳の持病で病院通いをしています。
ある日<秋野>は、渉外課の26歳の<森村茜>から、取引先の社長ともめているという相談を受け、社長の別荘がある箱根まで同行しますが、帰途の途中にみせた彼女の涙に男心をくすぐられます。
水曜日の「ノー残業デー」には、<秋野>は<茜>とのデートを重ね、やがて男と女の関係に行きつきますが、融資を断られた顧客にホテルでの密会場面を写真に撮られ、融資話をちらつかせて強請られます。
年頃の娘との会話、銀行内の業務や上司と部下との関係、取引先との折衝等も細かく、一人の銀行員の心の機微が、見事に描かれていました。