『北京炎上』水木楊(文春文庫)
11月
11日
本書は2008年8月8日に開催された「北京オリンンピック」以降、役人の腐敗、農村の貧困等の人民の不満が噴き出す2014年から2015年を舞台にした近未来小説です。
東西新聞社の<田波慶介>は北京支局に詰める特派員ですが、妻<荘鳴風>は北京大学時代に「天安門事件」に参加した人物であり、25年後の現在でも反政府運動を陰で支え、学生時代の許婚<劉>と行動を共にしています。
中国民主化の夢に走る活動家や、愛国心に燃える軍将校や老獪な中国首脳部の政治的な思惑を縦糸に、刻々と状況が変わる中国の様子を横糸に、<田波>や<鳴風>にかかわる人物たちの人間ドラマが展開されていきます。
著者は日本経済新聞社のロンドン特派員、ワシントン支局長を経てきただけに、経験を生かした構成は、フィクションとは思えぬ説得力のある内容でした。