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- 今年の読書(80)『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』白石一文(講談社文庫)
主人公は、『週刊時代』の敏腕編集長の<カワバタ>41歳です。
芸能界とのつながりもあり、若いタレントの<リコ>や、同僚の妻との情事を楽しみながら、妻<ミオ>は東大の教授、郊外の一戸建てに娘<ナオ>と一緒に住んでいますが、過去に生後3か月の息子を亡くした心の傷を抱えています。
2年前に胃がんの手術を受け、マスコミという情報社会の中に身を置くが故、息子への責任感と共に、人生に対する考察が複雑に頭の中をかけ廻り始めます。
上下に冊の文庫本ですが、(上)の段階では、導入される、おそらくは仕事柄<カワバタ>が読んでいるであろう書物の引用などが続き、どのような方向に進むのかの疑問を持ちましたが、複雑な人間関係が清算されるラスト一行は、さすが第22回山本周五郎賞受賞作品だと感じさせる終わり方でした。
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