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- 今年の読書(1)『映画よさようなら』佐々木敦(フィルムアート社)
今年最初の読書記は、批評家<佐々木敦>の映画論集『映画よさようなら』を選びました。2020年以降に執筆したテキストを集めたポストメディア時代の映画批評集です。
第1部の「歴史/映画史」では、<ペドロ・コスタ>や<アピチャッポン・ウィーラセタクン>の作品に目だけでなく耳でも対峙。<タル・ベーラ>や<ヴィム・ヴェンダース>、<マルグリット・デュラス>らの歩みを振り返っています。
第2部の「受容/メディア」には、アーカイブ映像を編集することで「物語」を生み出す<セルゲイ・ロズニツァ>や特異な「ホームムービー」を生み出した<原將人>に向けたテクスト、小説家<円城塔>が脚本を手がけたテレビアニメ『ゴジラ S.P(シンギュラポイント)』(2021年・監督:高橋敦史)についての論考を収録。
第3部の「倫理/ポリティカル・コレクトネス」ではともに新作でろう者を描いた<濱口竜介>と<深田晃司>(『LOVE LIFE』)を取り上げるほか、<小森はるか>・<今泉力哉>といった若き日本の映画作家たちに注目しています。
「映画はもうほんとうはとっくに「映画」ではなくなっており、ただ私たちは「かつて映画であったもの」の記憶(?)をそこに見出(そうと)しているだけなのだ」と語る著者が、「歴史」「受容」「倫理」という3つの問題系から「映画なるもの」と向き合い、「目の前の「映画」に対峙し、そして先へと進」むための思考を展開させています。
そのほか、映画を取り巻く状況を整理したプロローグ、<濱口竜介>が『ハッピーアワー』(2015年)以前に制作した監督作『親密さ』に対する書き下ろし論考も収録されています。その死( 1930年12月3日~2022年9月13日)を受けて大幅に加筆した<ジャン=リュック・ゴダール>論も収められ、「映画」の現在地を示す映画批評集となっています。
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