今年の読書(63)『昆虫学者、奇蹟の図鑑を作る』丸山宗利(幻冬舎新書)
10月
18日
「子供たちのために死んだ虫(標本)の写真ではなく、生きたままの虫を撮って載せたい」そんな学習図鑑は今までありませんでした。目標2千種、期限は1年、撮影はプロではなく全国の昆虫愛好家が結集、しかも〈白バック〉での撮影という最高難度のプロジェクトでした。
相次ぐ問題、積み重なる疲労、ピリつく人間関係を乗り越え、ついに日本全国7千種の生体を撮影、学習図鑑史上最大となる2800種掲載の奇跡の図鑑ができあがりました。これは無謀な挑戦に命を燃やした虫好きたちの、全記録で、ワクワクしながら読み終えました。
わたしの〈ファルコン昆虫記〉は記録としてあるがままの状態で撮影していますが、飛び回る・素早く動き回る被写体に対して、生きた状態での〈白バック〉撮影は想像を超える苦労だったとおもいますが、図鑑を見る側の同定作業には素晴らしい力を発揮してくれそうです。
昆虫採集や撮影に参加した人たちのコラム欄も挿入されていて、一層の臨場感を感じさせてくれる一冊でした。
今年は『昆虫学者はやめられない』(小松貴・新潮文庫)の発行もあり、自然分野に目が向けられているのを喜んでいます。