擬態できる種の中に擬態しない個体がいるのはなぜか
5月
6日
県内に生息する鳥の捕食から身を守るため毒チョウに擬態する「シロオビアゲハ」を用いて、「増えすぎると擬態の効果が失われる(鳥が擬態チョウを襲う)ため、集団内で擬態できるチョウの割合に上限がある」という古くからの仮説を世界で初めて立証しています。島ごとにチョウの生息割合が異なる琉球列島の特性を生かし、毒チョウの多い島で擬態率が高いことなどから仮説を裏付けています。
「シロオビアゲハ」の雌は、毒を持つ「ベニモンアゲハ」に模様を似せ、天敵の鳥から身を守る性質があります。すべての「シロオビアゲハ」が擬態すれば、毒を嫌う鳥から襲われにくくなるはずなのに、擬態しない個体がいることが、進化学的なパラドックスでした。
琉大研究チームは、「ベニモンアゲハ」の生息割合が異なる奄美・琉球の島々で擬態チョウの割合を比較。毒チョウが多い石垣島や宮古島では擬態率が高く、毒チョウが少ない喜界島や竹富島では擬態率が低かった。
同様の調査は1982年にも行われていましたが、研究チームはDNA解析で島ごとの遺伝的な違いはなく、擬態率が変化する要因は鳥の捕食以外にないことも証明し、「擬態率の毒チョウ依存説」を裏付けた。
毒チョウが多い島ほど、鳥が毒チョウの外見を覚えているので、多くの「シロオビアゲハ」が擬態すると考えられています。
このパラドックスを巡り、「擬態した雌は雄にモテないから擬態しない個体が出る」という説もあるようです。今回の研究は「毒チョウ依存説」を立証しましたが「モテない説」は否定していません。
「ツマグロヒョウモン」 も、「カバマダラ」に擬態していますが、、「カバマダラ」は日本では少ないのに、擬態が続くのも不思議です。