『こぶしの上のダルマ』南木佳士(文春文庫)
4月
11日
表題作にもなっている『こぶしの上のダルマ』は冒頭の1章ですが、著者が13歳まで暮らした生家に一年ばかり一緒に遅らした盲目の<おときばあさん>の思い出話が綴られ、最終章の『麦草峠』において、<おときばあさん>を理解する章で終わります。
それぞれが独立した短篇ですが、著者の心の葛藤を、生家がある廃村とそれらと関連する山の話を絡めながら、自らの存在意義を確かめる作品が連作でまとめられています。
各短篇にでてくる登場人物も個性的で、沖縄から来た研修生<東門真砂子>や、大きな田んぼを耕す百姓の<西野>など、相手との会話は反面著者の考えを表しているようで、飾り気のない文章が心に奥深くしみ込む一冊でした。