韓国の合計特殊出生率「0・72」
3月
4日
韓国の2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数)が、暫定値で「0.72」と発表されています。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、出生率が1を下回るのは韓国のみで、2022年に「1.26」でした日本と比べても著しく低く、韓国政府は対策に巨額を投じてきましたが、低下の一途をたどっています。
実際に少子化の影響はさまざまなところで表面化しています。教育省は2月、今年の新入生がいない小学校が全国で157校に上ると発表しました。国防白書によれば、徴兵制をとる韓国軍の兵力は2020年末の約55万5000人から2022年末には約50万人にまで減少。国防面への影響も懸念されています。
少子化がここまで深刻化する背景には、住宅価格の高騰や、女性の社会進出に伴う晩婚、非婚化などさまざまな要因があるとされています。韓国銀行(中央銀行)は昨年11月に発表した報告書で、韓国が過度な競争社会であることや、住宅や雇用、子どもの養育面での不安が影響を与えていると指摘しました。
韓国政府は5年ごとに「低出産高齢社会基本計画」を定め、2006年以降、少子化対策に280兆ウォン(約31兆6000億円)余りを投入。歴代政権も出産支援や保育施設の設置などの対策を講じてきています。<尹錫悦大統領>は2月、「これまでのような対応だけで解決できないことを経験した。政策を再構築しなければならない」と危機感をあらわにしました。
漢陽大国際大学院の<田英洙教授>は、これまでの政府の対応は「感覚的で惰性的だ」と指摘。「現在の政策は出産の意図がある人を対象としているが、晩婚化や非婚化が広がる状況では若者が恩恵を受けられずミスマッチが生じている」。若者の人生設計の変化を見据えた支援策が必要だとしています。