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今年の読書(75)『未来』湊かなえ(双葉文庫)

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第6回本屋大賞にも輝いた『告白』(2008年8月刊)で、<湊かなえ>は作家デビューを果たし精力的な執筆活動を続けています。「デビュー10周年記念作品」として書き下ろされたのが、自己最長となる原稿用紙約700枚の大作『未来』です。2018年5月に単行本として刊行され、2021年8月8日文庫本(481ページ)として発売されています。

物語の始まりは未来の自分と名乗る、30歳の主人公「章子」から手紙が送られてくるところから始まります。受け取った「章子」は10歳。その時「章子」は大好きなお父さんを病気で亡くしたばかりでした。手紙には「わたしがあなたに手紙を書く事にしたのは、あなたの未来は、希望に満ちた、暖かいものである事を伝えたかったからです。」と書かれ、10歳の「章子」を励ますような内容になっていました。

「章子」はその手紙が本物の未来からの手紙だと信じ、未来の自分に手紙を届ける術はないので、未来の30歳の「章子」に向けて自分に起こった出来事を手紙に綴っていきます。まだ10代の「章子」には母「文乃」の病状やその後の男関係を含めて重たすぎる出来事が多々起こるのですが、未来の「章子」からきた言葉を信じ今起こっている出来事は全て試練だと捉え、強く生きようとします。

一方、未来の自分から手紙を受け取ったのは「章子」だけではありませんでした。「章子」の同級生の「亜里沙」も未来から手紙を受け取っているのですが、「亜里沙」はそれが本物の手紙でないことに気づきます。

同級生の「章子」と「亜里沙」は、友達と呼べるほど深く関わったことがなかった2人ですが、「章子」のいじめをきっかけに2人の関係性は突然深まります。そして関わってしまったが故に2人は自分たちの家族の「壊れていった真実」を知ってしまい、ある決意をします。

「章子」の強く生きようとする手紙に続き、登場人物たちのそれぞれの家庭環境が、時にはおぞましい内容で語られていくのですが、『未来』という希望を表すはずの言葉なのですが、語られていく内容は「絶望」に近い情況で、結末が気になりながら読み終えてしまう、<湊かなえ>ワールドの集大成にふさわしい内容でした。
#ブログ #文庫本 #読書

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