17歳のデビュー作『インストール』(2001年11月)で文藝賞、『蹴りたい背中』(2003年8月)で第130回下半期の芥川賞、『かわいそうだね?』(2011年10月)で三島由紀夫賞と輝かしい経歴の著者ですが、寡作なため最近は、作品を目にする機会が少なく感じていました。 本書は、表題作を含む4篇の短篇がおさめられています。 自殺未遂で助かった小中学校時代の女友達を見舞う『おとな』は、複雑な女性心理が描かれていて面白く読めました。 少年時代の伯父さんとの交流を描いた『トイレの懺悔室』は、こんなこともあるだろうなという現実感を以って、心に響いてきました。 日常生活のさりげないできごとを昇華させる技量はさすがです。