『おまえさん』(上)宮部みゆき(講談社文庫)
10月
16日
冒頭から馴染の煮物屋<お徳>が登場、辻斬りされた男の死に場所から影が消えないということで、賑やかな念仏講の場面から物語は始まります。
辻斬りされた男の身元がわからないなか、痒み止めの「王疹膏」を売り出していた<瓶屋>の主人<新兵衛>が、同じ手口で戸締りされた店の寝所で切り殺されてしまいます。
<平四郎>は、十手術の長けた若き同心<間島新之助>と二つの事件を調べ出します。
やがて、身元不明の男の素性が薬商<大黒屋>に勤めていた<吉松>で、同じく<新兵衛>も同じ時期に<大黒屋>に勤めていたことがわかり、事件の繋がりが見えてきたのですが・・・。
この殺人事件を中心に据え、富札で300両を引き当てた<仙太郎>が起こす痴話事件、同心<間島>の御隠居<本宮源右衛門>の登場、<平四郎>の手下である<政五郎>の里子である「でこ」こと<三太郎>と生みの親である<おきえ>との葛藤など、江戸の町を舞台に繰り広げられる、人情話満載の610ページの上巻でした。