今年の読書(38)『ぬけまいる』朝井まかて(講談社文庫)
3月
27日
登場するは、若い頃に「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれた28歳の、<お以乃>、<お志花>、<お蝶>という江戸娘三人組です。
それぞれに個人の悩みを持ち鬱積した日々を重ねていた三人は、突然仕事も家庭も掘り出して「お伊勢参り」に繰り出し、その珍道中が描かれています。
女性の江戸時代を背景とした道中記は珍しく、読みながら<田辺聖子>の 『姥ざかり花の』 を思い浮かべていました。
道中の背景は、当時(1845年:弘化2年)の史実に基づき綿密ですし、植木職人の世界を描いた 『ちゃんちゃら』 や、植物学者<シーボルト>を描いた 『先生のお庭番』 など植物の世界にも造詣が深い著者で、江戸時代に流行した「変化朝顔」などの話題も登場、なかなか楽しめました。