《 泉の森・野鳥観察デッキ近く〝4月花XXI〟❖ ’24/04/07 ❖ 》
ミミガタテンナンショウ(耳型天南星、日本固有種);
蝮草に似ており仲間内では総じて蝮草と古くより呼んでいた。
先日、泉の森植物調査をされておられる方々に偶然お会いした折に、
蝮草ですよねぇ、と云ってしまい・・・丁寧に説明していただいた。
泉の森では、正式名称の“蝮草”は確認されていない由。
浦島草があちこちで見え、武蔵鐙の姿も見える環境、どこぞにひっそりと!!
森の散策は楽しく夢膨らむ。耳型天南星の存在を初めて知った(出会ってなかった)。
性転換する植物で、成長すると雄株から雌株になる「雌雄偽異株」。
草丈は5・60cm前後、球根から2本の鳥趾状複葉を出す。
複葉の小葉は楕円形で7~11枚。葉が開く前に茎先に肉垂花序を伸す。
周りを仏炎苞が覆う。仏炎苞は暗柴色で、白い縦線が目立つ。
仏炎苞の口の周りが耳のように大きく出っ張りやや垂れ反り返る。
耳の形状だけ着眼していると見分けが付かないものも多く見られる由。
葉に半ば隠れるように仏炎苞があれば紫蝮草といえるか。
葉が後出で仏炎苞より下方に葉が出るならば耳型天南星と教わった。
テンナンショウ属植物は、扁平な球形の塊茎を持つ。
サトイモ科の特徴として総苞の形が棍棒状構造の肉穂花序(仏像)となり、
大型の苞(火焔光背)が包んでいることから「仏炎苞(ブツエンホウ)」と呼ばれる。
それが花で薄暗くて陰湿な樹下に生えている。
球(塊)茎を輪切りにし、石灰をまぶして乾燥したものが「天南星(テンナンショウ)」。
漢方では去痰、鎮痙、除湿薬として利用されていると聞く。
全草、特に球茎と液果の細胞中に針状結晶を有する“接触毒”の植物。
汁液が肌につくと炎症やかぶれを生じるので素手で触らないことだ。
塊茎又は根茎をもち、副雌雄異株又は雌雄偽異株(幼時に雄性、後に雌性)。
又、栄養が悪いと雄性、良いと雌性又は両性にと年ごとに変わる性転換。
つまり、地下にある球茎の大きさ(=貯蔵養分の多少)によって性転換する。
すなわち、4g以下の若い球茎は花をつけない無性株、
5~20gの小型は雄花のみを形成する雄株、
25g以上の大型球茎は雌花をつける両性株となる。
また球茎を切断して小さくすると大きさに応じて無性あるいは雄株となったりする。
それ故、最新の植物図鑑には『雌雄偽異株』と表記されている。
生育環境、環境が悪く個体サイズが小さくなると雌が雄と変化することもある。
同じ個体が条件によって性を変える(性転換)、人間界も同じか!!
ミミガタテンナンショウ(耳型天南星)に関して楽しい図鑑がある。
邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄著『日本産テンナンショウ属図鑑』2018年、北隆館刊。
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大分県と四国西側在住の植物愛好家にお尋ね、而してお教え頂きたい。
“オキノシマテンナンショウ” 学名:Arisaema limbatum var. conspicuum
ミミガタテンナンショウと酷似している植物が、四国西側と大分県に分布している由。
オキノシマテンナンショウ、現在はミミガタテンナンショウのシノニムらしいが、
基本的特徴はミミガタテンナンショウと瓜二つであると聞く。
違いは、小葉に模様が入らず光沢がありやや細い由。
この点以外に区別できる形態的特徴がほとんどないと云われる。
産地情報なしでオキノシマテンナンショウか否かを判別するは極めて難しい。
実物を是非にも見てみたい。自生地も見てみたいものだ。
「令和陸年(皇紀2684年)4月20日、記」